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話の展開が読めなくてどんどん引き込まれる!ある騒動を通して人間の内側を描いた『スリー・ビルボード』

今年もいよいよアカデミー賞が近づき、映画業界が色めき立ち始めましたね。
映画ブログをやっているからには、各部門にノミネートされた作品はなるべく観ておきたい!
ということで今後の鑑賞予定のリストがすごいことになっているのですが、なんとか制覇したいと思います(笑)

とりあえず作品賞に入った作品は観ておきたいという気持ちがあり、まずは先日公開された『スリー・ビルボード』を観てきました!

スリー・ビルボード(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)

監督 マーティン・マクドナー
脚本 マーティン・マクドナー
出演者 フランシス・マクドーマンド
ウディ・ハレルソン
サム・ロックウェル
ジョン・ホークス
ピーター・ディンクレイジ
アビー・コーニッシュ
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
キャスリン・ニュートン
ルーカス・ヘッジズ
公開 2017年
製作国 アメリカ合衆国
イギリス

あらすじ

アメリカはミズーリ州の田舎町エビング。
さびれた道路に立ち並ぶ、忘れ去られた3枚の広告看板に、ある日突然メッセージが現れる。
──それは、7カ月前に娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、一向に進展しない捜査に腹を立て、エビング広告社のレッド・ウェルビー(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)と1年間の契約を交わして出した広告だった。
自宅で妻と二人の幼い娘と、夕食を囲んでいたウィロビー(ウディ・ハレルソン)は、看板を見つけたディクソン巡査(サム・ロックウェル)から報せを受ける。

一方、ミルドレッドは追い打ちをかけるように、TVのニュース番組の取材に犯罪を放置している責任は署長にあると答える。
努力はしていると自負するウィロビーは一人でミルドレッドを訪ね、捜査状況を丁寧に説明するが、ミルドレッドはにべもなくはねつける。
町の人々の多くは、人情味あふれるウィロビーを敬愛していた。
広告に憤慨した彼らはミルドレッドを翻意させようとするが、かえって彼女から手ひどい逆襲を受けるのだった。

今や町中がミルドレッドを敵視するなか、彼女は一人息子のロビー(ルーカス・ヘッジズ)からも激しい反発を受ける。一瞬でも姉の死を忘れたいのに、学校からの帰り道に並ぶ看板で、毎日その事実を突き付けられるのだ。さらに、離婚した元夫のチャーリー(ジョン・ホークス)も、「連中は捜査よりお前をつぶそうと必死だ」と忠告にやって来る。争いの果てに別れたチャーリーから、事件の1週間前に娘が父親と暮らしたいと泣きついて来たと聞いて動揺するミルドレッド。
彼女は反抗期真っ盛りの娘に、最後にぶつけた言葉を深く後悔していた。

警察を追い詰めて捜査を進展させるはずが、孤立無援となっていくミルドレッド。
ところが、ミルドレッドはもちろん、この広告騒ぎに関わったすべての人々の人生さえも変えてしまう衝撃の事件が起きてしまう──。(公式サイトより)

第74回ヴェネツィア国際映画祭にて高評価を受け話題となったヒューマンドラマ。
監督は『セブン・サイコパス』や劇作家としても活躍するマーティン・マクドナー。
主演は『ファーゴ』や『あの頃ペニー・レインと』などの作品で有名な、フランシス・マクドーマントが務めています。
ファーゴのあの警官ですよ!あのキャラよかったな〜

社会派作品というよりはヒューマンドラマ

久々に頭使いました〜。見応えある作品でしたね!
ザ・ヒューマンドラマ

アメリカが昔から抱えている問題や、今現在浮き彫りになっている問題を詰め込みつつも、「人間」を描いた作品。暗くて重い作品かと思わせておいて、ときどきユーモアのあるセリフやシーンも盛り込んでいるチグハグな感じがまた面白かったです。
テーマは重いのに、絵面はどこかのんびりしているんですよね。ミズーリ州の田舎風景がそうさせるのかもしれません。

アカデミーの賞レースに上がっているというだけでほいほいチケットを取ったので(笑)、全く、1mmも予習をせずに観に行ったんです。ちゃんと楽しめるか不安だったのですが、テンポは悪くなくて、話の展開はわりとサクサクなので退屈にならないです
こうなるのかなと予想していた展開が、結構な確率で裏切られるから、どんな終わりを迎えるのかわからないのも、作品へどんどん夢中になっていく要因かもしれませんね。

3つの広告から始まる騒動

娘をレイプして殺した犯人を捕まえるため、母親は町外れの広告を買って捜査の進展を求めるが、やがてその広告を掲示したことで街の人々を巻き込んでいく騒動が起きてしまうというストーリー。

脚本がとてもうまく作られていて、物語をつくっていきたい・作っているという人はぜひ観て欲しいです。
物語は3人の登場人物の視点から動いていきます。殺された娘の母親であるミルドレッド警察署の署長であるウィロビーその部下のディクソン
母親が広告を買って、娘の事件の解決を望むが、その広告がかなり過激なんです。

一枚目が、娘はレイプされ焼き殺された
二枚目が、まだ犯人は捕まらないの?
そして三枚目が、署長のウィロビーはなにをしているの?

これが、真っ赤な看板に黒色で大文字でプリントされているんです。ポスターを見るとわかると思いますが、なんだか心臓に悪い広告ですよね・・・

ミルドレッドは自分の後悔から、命を削る勢いで娘の事件の解決を望むのです。しかしあまりの広告の過激さに、警察署はもちろん、街の人もみな反対をします。
最初に観ているときは、ミルドレッドの孤独な戦いに同情し、感情移入していきました。いつボコボコにされるんじゃないかとヒヤヒヤしたり。

ミルドレッドに対する警察たちの態度や、日頃の怠慢っぷりをみると、こりゃ警察がダメダメだわ、と思っちゃうんですよね。しかし、名指しで批判された署長には署長で、捜査を続けられないある事情があり、それを聞かされると、また彼を責めることはできなくなります。

さらに、そんな署長を尊敬する、難ありの警察官ディクソンやミルドレッドの息子や元夫など、街の住人が、一連の騒動に深く関わってきます。

ミルドレッド→ウィロビー→ディクソンの順番で本編が移り変わり、物語が進むことで、どんどん展開が変わり、私たちもそれぞれの登場人物に対する感情が変わっていきます

「ああ、さっきまであんなに同情していたのに、今ではミルドレッドを軽蔑している。」、「ウィロビーのそのやり方は良かったのか?」、「ディクソンに対して湧き上がっていた憎悪が今ではすっかり消え失せている・・・」と、自分がキャラクターに抱いていた感情が変わっていくのを実感できて、興味深かったです。

キャラクターに対する感情の変化を上手く描いているだけでなく、1秒先がどうなるのか読めない展開もうまいな〜と感心しました。
重苦しい話なはずなのに、どんどん作品に引き込まれていったのも納得です。

ラストは自分で考えろオチ
いつもだったらモヤモヤっとするのですが、ミルドレッドとディクソンの憑き物が落ちたような顔をみると、私も晴れ晴れした気持ちにさせられました。

世の中どこに味方がいるか、敵がいるかはわからない、というメッセージが込められた展開も、ハッとさせられるシーンが多かったです。
なんでもない端役だと思っていた人が、重要なキャラクターだったり、札付きのワルが味方になったり、善良そうな人が問題を起こしたり・・・

差別やレイプというアメリカの根底にある社会問題を描くというよりは、「人間」という生き物をむき出しにした作品だったなと感じました

3人の物語

本編そのものは、先ほど述べたようにミルドレッド、ウィロビー、ディクソンの順で視点が変わっていきます。この移り変わりもうまくて、面白いんですよ
こう、私の感情や共感する気持ちが、見事に脚本家に転がされている感じがしてですね・・・悔しい(笑)
振り返ると、脚本家が願った通りに、私の気持ちの中心が動いていってましたね。

本編序盤では、ミルドレッドに対して、娘の無念をなんとか晴らしてやろうと戦うたくましい母親というイメージを抱くんです。
街の人や警察署で無下にされている彼女をみると、なんとか彼女の悩みを解決して開放してあげたいという気持ちがむくむくと湧いてきます。

しかし、徐々に話が進むにつれ、このやり方は正しかったのか、この母親にも問題があるんじゃないかという気持ちにさせられてくる。
そうやって彼女にがっかりしたあとに、今度はミルドレッドの弱い一面がみえてくる。こうしてラストシーンを迎える頃には、完全に彼女の気持ちに共感し、一体化しているのです

いやあこうして思い返すと、人物描写が本当によくできていたな〜

2人目のウィロビーは、ただただ良い人(笑)
ビルは、それぞれ大切な人に手紙を書くのですが、その言葉もじんときました。
ミルドレッドへの手紙も良かったけど、ディクソンへの手紙はもっと胸が熱くなりました。そのあとのディクソンのシーンはグッときました。

でも私はあの終わり方は嬉しくないですね。どちらにせよあれじゃあ最後は辛い記憶しか残らないじゃないですか。
もし自分の家族がああいう事情を抱えていたとしても、あの終わり方じゃ立ち直れない気がするな〜

そして3人目のディクソン。
警官とは思えないくらい、乱暴者で、短期で、バカでダメなやつ。
もう最初は、腹が立って腹が立って仕方なかったのですが、いつの間にかそういう気持ちが引っ込んでて、ラストでは本当の自分になれてよかったなあという気持ちでいっぱいでした

やっぱりウィロビーからの手紙のシーンは良かったですね。
突然生まれ変わったかのように、炎の中、アンジェラの捜査資料を持って逃げ出すディクソンをみて、どうしちまったんだお前!と驚きを隠せなかったです。

またね、そのあとの病院のシーンがいいんですよね。
自分のしたことを反省し、泣きながら謝るディクソンに、腹わた煮え繰り返りそうなレッドですが(前のシーンでディクソンはレッドを窓から投げ落として重傷を負わせ、警察をクビになってる)、そっとオレンジジュースを出してあげるんですよ。しかもちゃんと飲みやすいようにストローをつけてあげる優しさつき。
憎しみからはなにも生まれないのだ・・・

そのあとのバーでの決死の格闘もよかった。あそこで死んじゃうかと思いました。
あんな乱暴者なのに、聞いている音楽は賛美歌のようなバラードというのもポイントですよね。

メインキャストから脇役まで、全員名演技

主役のフランシス・マクドーマンドは、『ファーゴ』の印象が強く、本編中は同一人物だと気付きませんでした。
鑑賞後に検索して、あああの人か!と気づきました。
今回は渋くてたくましい女性を演じていました。

ずっとしかめっつらで、厳しい表情をしていたのに、広告の前に一匹のシカがあらわれたシーンで、やわらかで優しい表情になっていたのが印象に残っています。

彼女の息子役がルーカス・ヘッジズでした。この顔は絶対どこかでみたことがある!!と思っていたのですが、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のあの男の子だったんですね。
あの時も素敵〜と思ったけど、今回も素敵だったわ〜
パディントン2』を観たときも、男の子の俳優さんがめっちゃ大きくなっていて驚いたけど、こちらでも、順調すぎる成長っぷりに驚きました。

ウディ・ハレルソンサム・ロックウェルの演技も素晴らしい。
2人ともいい味出しています。
最後の最後までいい人だったウディ・ハレルソンの、あの、全てを悟ったようなまなざしとかね。
うっかり吐血しちゃったときの心からびっくりしている表情が忘れられないですね。あんなに自然に驚くのすごくないですか?

サム・ロックウェルはやっぱり、前半と後半でのキャラクターのギャップがすごい!
血だらけになりながら、バスルームで犯人と思しき奴のDNAを採取している迫真の演技に胸がグッときました。

レッド役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズピーター・ディンクレイジもよかったですね。

良かった点

・脚本が秀逸
・役者陣の演技

単細胞なのでいつも脚本家の手のひらに転がされているのですが、ここまで転がされているのを実感したのは久しぶりです(笑)

悪かった点

・特になし

しいていえば、やはり好みは分かれる作品かもしれませんね。

まとめ

重そうなテーマにみえて、ふたを開けてみると意外と笑えるシーンがあったりして、鑑賞後もずっしり胃にくるような重さはなく、むしろスカッとした気持ちになれます。
ブラックユーモアの要素があり、人間の感情や考え方、生き方を描いた奥深い物語です。

脚本・構成が素晴らしく、話に引き込まれて、2時間じっくり作品の世界を味わえました。
笑える面白さではなく、興味深いという意味でとても面白かったな〜
観て良かったです。

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