予告で、野村萬斎の独特な演技が印象的だった『七つの会議』がいよいよ公開されました!
池井戸先生の作品はストーリーの起承転結がうまくて、映画化されても面白いので、いつも楽しみにしちゃいますね。
さらに監督は、池井戸潤原作の映像化ではおなじみの福沢克雄。
そして主演は野村萬斎!こんなに安心できる布陣はなかなかありませんよ・・・!
本作も、働く日本の社会人の胸を打つようなストーリーになっていることでしょう。
原作は未読なので、ワクワクドキドキです!
七つの会議
監督 | 福澤 克雄 |
---|---|
脚本 | 丑尾 健太郎 李 正美 |
出演者 | 野村 萬斎 香川 照之 及川 光博 片岡 愛之助 音尾 琢真 藤森 慎吾 朝倉 あき 岡田 浩暉 木下 ほうか 土屋 太鳳 小泉 孝太郎 溝端 淳平 春風亭 昇太 立川 談春 勝村 政信 世良 公則 鹿賀 丈史 橋爪 功 北大路 欣也 |
公開 | 2019年 |
製作国 | 日本 |
あらすじ
都内にある中堅メーカー・東京建電。営業一課の万年係長・八角民夫(野村萬斎)はどこの会社にもいる、所謂”ぐうたら社員”。
トップセールスマンである課長の坂戸宣彦(片岡愛之助)からは、その怠惰ぶりを叱責されるが、ノルマも最低限しか果たさず、定例の営業会議では傍観しているのみ。
絶対的な存在の営業部長・北川誠(香川照之)が進める、結果主義の方針の元で部員が寝る間を惜しんで働く中、一人飄々と日々を送っていた。
ある日突然、社内で起こった坂戸のパワハラ騒動。そして、下された異動処分。訴えた当事者は年上の部下、八角だった。北川の信頼も厚いエース・坂戸に対する、パワハラ委員会の不可解な裁定に揺れる社員たち。
そんな中、万年二番手に甘んじてきた原島万ニ(及川光博)が新課長として着任する。
会社の“顔”である一課で、成績を上げられず場違いにすら感じる原島。誰しもが経験するサラリーマンとしての戦いと葛藤。だが、そこには想像を絶する秘密と闇が隠されていた・・・(公式サイトより)
2012年に刊行された池井戸潤の同名小説が原作。
企業で働く社会人の苦労や葛藤、企業との戦いを描く。
監督は『半沢直樹』、『下町ロケット』、『陸王』など、池井戸潤作品ではおなじみの福沢克雄。
主演に狂言師でもある野村萬斎を迎え、香川照之、及川光博、片岡愛之助など実力派の役者が勢揃いしています。
働くことに疑問を感じている人は必見!
相変わらず池井戸潤の作品は、働く社会人に刺さる内容ですね。
特に今回はラストが印象的。日本人にグサグサくるシーンで、私は心から共感しました。
自分がはみ出し者というか、なんだか会社の歯車にかみ合っていないんだよな〜と感じていた気持ちが言語化されてスッキリ。
リサ
池井戸潤の作品は、小説はおろかドラマもろくにチェックしていないので、比較ができないのですが、日本の企業体質にメスを入れる、というストーリーが定番なのかな?
『空飛ぶタイヤ』と似たような雰囲気のストーリーでした。
本作も二転三転する展開で、なかなかオチにたどり着かなくて、最後までどうなるのか読めない緊張感がラストまで漂っていました。
物語の構成力がすごいですね。
出演キャストの演技も文句なし!
野村萬斎はクセのある主人公がぴったりでしたね〜
居眠りぐーたら社員がクライマックスではできる男になっていて、その切り替わりもお見事。
リサ
上映時間もそんなに長くないですし、色々なキャラクターの視点から物語が作られていく群像劇の要素もあったので、場面切り替えが多く飽きませんね。
リコールなどの専門用語もちらほら飛び交いますが、普段からニュースをみていれば十分内容は理解できるはずなので、原作未読でも楽しめました。
古い体質の日本企業にメスを入れる!
結果主義の電気メーカー・東京健電の営業課は、鬼上司で有名な営業部長の北川の元で、売り上げを上げるために必死で働く毎日。
冒頭から始まる会議シーンは圧巻でしたね。いまだにあんな軍隊のような会議をしている会社ってあるのかな。
リサ
一方、営業課の係長である八角は、なにをするでもなくぐうたら過ごしていた。
会議中は居眠り、退社時間になればすぐに帰る、繁忙期でも構わず有給を取る、そんな八角の態度に課長である坂戸はついに堪忍袋の尾が切れ、八角に怒鳴り散らすんですね。
まあ会議中の居眠りはまずいですが、時間になったら帰ったり有給の取得は従業員の権利ですから、問題はないですけどね。
ただ他の人が仕事をしているから残業をする、他の人が休み返上で働いているから有給は取得しない、という考えは私は全く賛同できませんけど。
リサ
さて、ストーリーに戻ります。
怒鳴り散らされた八角は、なんと坂戸をパワハラで訴えるのです。
周囲は呆れますが、予想に反して坂戸はパワハラ認定され、人事課へ移動となってしまいます。
新たに課長に任命された原島は、八角に興味をもち、経理の浜本と共に彼の行動を追うようになります。
八角の行動を追いかけるうちに、八角が社内で何かを企てていることに気づき、やがて企業がとある不正を抱えていることを知ることとなります。
本作では、古い体質が抜け切らない日本企業と、そこで働く社員たちの葛藤や陰謀を「隠蔽」や「不正」に絡めて、浮き彫りにしていきます。
働くとはどういうことなのか、数字を出すことが働くということなのか、誰かを貶めてでも出世することが働くということなのか。
目的を持たずに日々業務をこなしていることが、働くというこなのか、これからの時代の働き方に対しても一石を投じています。
印象的なラストシーンの長ゼリフ
冒頭の感想でも描きましたが、本編のラストシーンがまさに作品の肝、伝えたいことだと思います。
どうしたら不正がなくなりますか?という役人からの質問に対して、八角は熱い想いをぶつけます。
ここの演出がかっこよかった!
野村萬斎がアップになって、背景もBGMもない。完全なる独壇場。
「不正は無くならない。それは、資源のない島国が不正を繰り返すことでのし上がってきた結果が、日本人のDNAに刻まれているというんですかねえ。(中略)(中略)欧米人からしたらね、そんな組織は辞めちゃえばいいじゃないって思うんでしょうけどね。侍として生きてきた日本人遺伝子がね、仲間の輪から外れることは負けのように思えてしまうんでしょうね。組織から抜けるということは、侍で言えば藩から抜けるということになりますから。(中略)みんなガキみたいに悪いことは悪いって言い合えばいいんじゃないんですかね・・・」
もっと長いセリフだったのですが、いいな〜と思ったセリフを抜粋しました。(うろ覚えです)
リサ
このラストシーン、全力で同意します。
言いたいことはなんでも言えばいいんですよ!隠蔽や不正なんてのは、いつかは必ず発覚するものです。
自分の良心を会社のために踏み潰した瞬間、もうその会社はやめるべきだと思いますね。
輪から外れたら別にまた新しい輪に入ればいいし、入れないなら1人で生きていくための方法を探せばいいんです。
もう侍の時代は終わったのです。特に今の時代は1つの会社に何年もいるような時代じゃないですし、いくらでも冒険したらいいんです。
劇中でもそんなセリフがありましたが、生きてりゃどうにでもなるんですよ。
・・・と、ラストのセリフに強い共感を覚えたところで、あ、私って日本の社会に全く向いてないな、と気づいてしまいました(笑)
時代が変わり、日本も働き方について、いい加減考え直す時がやってきたのではないでしょうか。
池井戸先生の思う、これからの日本の社会のあるべき姿を訴えたいいシーンでした。
リサ
出演者の演技に引き込まれる!
数々の映画に出演している名役者が勢揃いしたこともあって、引き込まれる名シーンがたくさんありました。
それぞれの個性がぶつかり合っている演技合戦が、さらに胸を熱くさせますね。
野村萬斎さんは久しぶりに拝見しましたが、独特の演技が印象的でした。
序盤はクセが強いな〜と思っていましたが、そのクセの強さが八角のキャラクターを際立たせていてよかったです。
あといい声。とってもいい声。
リサ
そしてもう1人期待していたのが、香川照之さん。さすがですね!
予告では香川節全開の、やややりすぎ感のある演技だと思ってましたが(笑)、スクリーンでみると他の方の演技とのバランスがとれていました。
今回は悪役と思いきや、いいやつでしたね。
毒気のない演技もちゃんとできるんだなと、失礼ながらも香川さんの泣き演技をみて感心してしまいました。
私がみる香川さんっていつも毒気満々なんですよね(笑)
個人的にはラストのバラを食べてる香川さんが好きです。
あのシーンはリラックスしていて、一番生き生きしていたような気がします(笑)
そういえば!オリエンタルラジオの藤森さん、ちゃんと役者やってましたね!
チャラ男のイメージしかないけど、まあ元々頭はいいみたいだし、やるときはやる男なんですね・・・
と思って調べたら、結構役者や声優としても活躍しているんですね。
総評
評価
良かった点
- ストーリーの構成
- 出演者の演技
やはりストーリーの構成がよかった!物語として最初から最後まで面白かったです。
悪かった点
- 登場人物たちの心理描写をもう少していねいにして欲しかった
最後の最後まで黒幕が明かされないスタイルなので、難しいと思いますが、もっと登場人物たちの心理描写もみれたら面白かったかも!
八角の過去も駆け足だったし、老夫婦の夫の自殺もちょっと不可解ですよね。
まとめ
日本の社会に揉まれながら頑張っている社会人の皆さんにおすすめの作品です。
なかでも、働くことに葛藤や悩みを抱いている方は必見かと。
集英社 (2016-02-19)
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