人生一度は、なにかとんでもないことをやってのけたい、とか、自分は特別な人間なのだ、と思う時があありますよね。
特に、人生も、人間としてもの不安定な学生時代なんかは、常日頃そんなことを考えている人も多いのでは。私も全く根拠のない万能感を抱いたことがよくありました(笑)
そしてそれらの考えが暴走した結果、大量の黒歴史が生まれるんですよね・・・(笑)
今回鑑賞した『アメリカン・アニマルズ』でもそういった、若さゆえの過ちが描かれていました。
アメリカン・アニマルズ
監督 | バート・レイトン |
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脚本 | バート・レイトン |
出演者 | エヴァン・ピーターズ バリー・コーガン ブレイク・ジェンナー ジャレッド・アブラハムソン |
公開 | 2019年 |
製作国 | アメリカ合衆国 イギリス |
あらすじ
「I’m Alive!!」とジョニー・サンダーを歌いながら車で飛ばしていく青年、ウォーレン(エヴァン・ピーターズ)とスペンサー(バリー・コーガン)。
廃棄された食べ物を盗むことで最小限のリスクを楽しむ、そんなどうしようもない毎日だ。くだらない日常に風穴を開けたい、特別な人間になりたいと焦がれる2人は、大学図書館に貯蔵される貴重な本を盗み出す計画を思いつく。
手に入れれば1200万ドル、誰よりも自由を求めるウォーレンと、スペシャルなことを経験したいと願うスペンサーは仲間集めを始めることに。
目をつけたのは、FBIを目指す秀才エリック(ジャレッド・アブラハムソン)と、当時既に実業家として成功を収めていたチャズ(ブレイク・ジェナー)。
彼らは互いを『レザボア・ドッグス』に習い「ミスター・ピンク」「ミスター・ブラック」などと呼び合うのだった。
強盗作戦決行日、特殊メイクをして老人の姿に扮した4人は遂に図書館へと足を踏み入れる――。そこで彼らを待ち受ける運命とは?これは、刺激を求めて道に迷ったアメリカン・アニマルズ達の物語。(公式サイトより)
独特な構成が印象的
本編と本人たちへのインタビューが交互に混じる、独特な構成が印象的な実話物語でした。
大学に収蔵されている、貴重な美術品を盗んだ若者たちの実話物語が描かれます。・・・現実は『オーシャンズ11』のようにはいかないね!
大学生って一番バカやっちゃう年頃なんだろうな〜、急に世界が広がって、いろんな悩みも生まれてくるしね。
結局のところ、こじらせた大学生の黒歴史でしたというのを、本人へのインタビューと、重ためな色調の映像で、シリアスに仕上げている感じがしました。
事件を起こすのは4人の大学生なのですが、誰かの一方的な視点で描かれるのではなく、あくまで4人それぞれの視点で物語が語られるのがよかったですね。
バカなことやるのはいいけど、やるなら他人に迷惑かけずに、自分たちで完結させなさいなと思いました。バカなことをやるってのは、良いことであれ悪いことであれ、最後は自分に返ってくるもんですから。
特別になりたかった大学生たちの物語
物語は実際に起きた事件を再現。並行して関係者たちが登場し、当時の状況や心境を語るシーンがあります。
本人たちへのインタビューが間に挟まれていますが、うまく本編に滑り込ませているので違和感がなく、ドキュメンタリー色よりもドラマ色の方が強いです。
人生にくすぶっていた主人公のウォーレンとスペンサー。自分たちは特別だと思い込み、周囲の人間もつまらないやつばかりで、毎日がくだらないと思っている。
人生の目的も意義もみつからず、なんとなく毎日を過ごしていたある日、彼らはとんでもない「盗み」の計画を思いつく。
この作品の特徴的なところは、やはりご本人登場ですね。まさか本人たち(しかも4人全員)が登場するとはおもわず、びっくりしました。序盤は本人たちのインタビューによって当時の状況が整理されていき、物語がクライマックスに近くにつれ、本人たちの登場と言葉数は少なくなっていきます。
リサ
監督は彼らが刑務所で実刑を受けている間から、彼らのもとに通い詰めインタビューを繰り返していたそうです。その甲斐もあってか、物語は誰かの視点に偏ることなく、フラットな目線で語られていたと思います。
犯罪者本人が映画に出ている作品ってちらほら見かけますが、外国の映画ならではですよね〜
日本じゃ絶対にありえないだろうし、あまり観たいとも思わないですよね・・・私は、何平気なツラして映画なんか出てんだ?と思ってしまう(笑)
実話の物語と言われていても、日本人だからあまりそういう実感がなく観られるのかも。
さて、ストーリーの結果を言ってしまうと、盗みは失敗してしまいます。でも、彼らのインタビューを聞いていると、そうだろうなと納得しますね。インタビューを受けている彼らはみな、根は真面目なんだろうな、という印象を受けます。
勢いでなんとなく計画を立て始めてしまったり、友情を取った結果後には引けなくなったりと、判断力がまだそこまでない大学生らしい事件だったのではないでしょうか。
リサ
いわゆる「大二病」に取り憑かれた大学生たち
なんというかね、彼らは「大二病」ってやつにかかってたんですよ。大二病というのは、大学二年生くらいの年齢の若者で、急に環境問題や政治問題に言及しだしたり、スタバに入り浸ったり(これは社会人でもいるか)と、妙に大人ぶった(と本人たちは勘違いしている)言動をする人を指すんですね。
大二病というのはその名の通り、大学に入ってから時間が経つと生まれるらしいです。つまり、生活に余裕ができてきて、「自分探し」というやつをし始めるんですね。あらゆる行動の中で、自分が何者なのか理解しようとする結果、アイタタな行動をしてしまうのでしょう。
今回の主人公たちも、美術品が欲しいわけでもなく、盗みがしたいわけでもなく、「普通の人ができない、なんかすごいことをやりたい」というのが目的なんですよね。それがたまたま「貴重な美術品を盗むこと」になっただけだったのではないかと思います。
リサ
だから盗んだ後のことなんて、考えちゃいない。失敗なんてするわけがないと思っている。
そういう向こう見ずなところも学生らしさを感じました。
盗みなんてやるものじゃないですし、そううまくいかないと思いますが、あえて言わせてもらうと、盗みを成功させるには確固たる目的がないと難しいんじゃないですかね。
それが生活の安定にしろ、復讐にしろ、脅しにしろ、前提として、盗みを完遂しなくてはならない、という覚悟がないと失敗する確率の方が大きいと思います。
盗むための目的も覚悟もろくにない容疑者たちにとっては、「万引き」くらいの感覚だったんじゃないでしょうか。
ストーリーのラストでは、彼らのその後について言及されています。全員、真面目に働いていたり、大学に通っていたり、仕事を探していたり・・・現時点では、まともな人生を送っています。よかったね。
バリー・コーガンいいよね〜
若手の役者たちが大活躍した本作。
やはりウォーレン役のエヴァン・ピーターズと、スペンサー役のバリー・コーガンは目を引く魅力がありますね。
中でも、バリー・コーガンは『ダンケルク』で印象的な役だったので覚えていました。今回も絶妙な存在感がよかったです。海外では悪役で有名みたいですね。
不思議な顔立ちですよね。アイルランド人のようですが、ハーフとかではないのかな?しゃべっているシーンよりも、黙っているシーンの方が独特の雰囲気があって好きです。
クライマックスではほとんど喋らないで、アップになっているシーンが多いのですが、その時のなんともいえない表情がいい。演技していますよという感じがなくて、自然。
リサ
総評
評価
良かった点
- 若手俳優たちの演技
- 盗みを実行する時の緊張感
特にバリー・コーガンよかったですね!彼が出演している他の作品も観たくなりました。
悪かった点
- 中盤が長い
盗みを始めるまでが長ったらしいかなと感じました。
まとめ
本編の中に本人たちのインタビューが混ざるという、おもしろい構成の作品でした。
彼らがやったことはしょうもないことですが、若者らしい心理と行動ではありますよね。
私は彼らの考えや行動に共感できる部分が少なく、途中で飽きてしまいましたが、悩める学生さんたちはこの映画をみて今一度自分を見つめ直す機会をつくるのもいいかもしれませんね。
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