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本人が本人役!?ドラマティックかつ、リアリティを追求したイーストウッド渾身の実録ドラマ『15時17分、パリ行き』

クリント・イーストウッド監督最新作の『15時17分、パリ行き』を観てきました!
この作品、ずっと観る前から気になっていまして・・・

というのも、このノンフィクション映画でメインキャストを演じているのが、実際に事件で活躍したご本人なんです!
ノンフィクション映画でモデルになった人がカメオ出演っていうのはよく聞きますが、モデルになる本人たち自身が本人役を演じるなんて今まで聞いたことないですね。

前代未聞の挑戦作、楽しみにしてました!

15時17分、パリ行き

監督 クリント・イーストウッド
脚本 ドロシー・ブライスカル
出演者 スペンサー・ストーン
アンソニー・サドラー
アレック・スカラトス
ジュディ・グリア
ジェナ・フィッシャー
公開 2018年
製作国 アメリカ合衆国

あらすじ

2015年に起きたパリ行きの特急列車内で554人の乗客全員をターゲットにした無差別テロ襲撃事件。
極限の恐怖と緊張感の中、武装した犯人に立ち向かったのは、ヨーロッパを旅行中だった3人の心優しき若者たちだった。
なぜ、ごく普通の男たちは死の危険に直面しながら、命を捨てる覚悟で立ち向かえたのか!?

本作では、なんと主演は“当事者本人”という極めて大胆なスタイルが採用された。
実際の事件に立ち向かった勇敢な3人がそれぞれ自分自身を演じている。
さらに乗客として居合わせた人たちが出演し、実際に事件が起こった場所で撮影に挑んだ究極のリアリティーを徹底追求した前代未聞のトライアル。
我々はこの映画で“事件”そのものに立ち会うことになる。(公式サイトより)

2015年に起きた、高速列車内の銃乱射事件を基に作られた実話物語。
監督は、『アメリカン・スナイパー』『ハドソン川の奇跡』に続くノンフィクションものを手がけたクリント・イーストウッド

そして主演を務めるのが、実際に事件に巻き込まれた3人の男性。
スペンサー・ストーンアレック・スカラトスアンソニー・サドラー
さらに他の乗客も当時列車に居合わせていた人々が出演し、よりリアリティのある空間を演出しています。

ドラマティックなドキュメンタリー

やっぱりイーストウッドは、人を作品の中に引き込むような構成、演出がうまい!
夢中になって観てしまって、あっという間に本編が終わりました。

公式ホームページに、「普通の人々に捧げる映画だ」とイーストウッドのメッセージがありましたが、まさにその通り、なんでもない日常をぼんやりとほのぼの過ごしている私のような人間には、ものすごくグッとくる作品でした。

事件に巻き込まれた3人も、驚くような特別な能力や才能を持っていたわけではない、普通の人。
たまたま3人のうち2人は軍に従事していて、ある程度の知識があったとはいえ、事件やテロはいつどんなときに起きてもおかしくない。
もしそんな状況に遭遇してしまったら、どう対峙するか、改めて考えさせられます。

そして、単なる事件の再現ドラマにとどまらず、事件に巻き込まれる3人がどのような人生を送ってきたのかをドラマチックに描いている部分もすごく魅力的でした。
特に中心人物でもあるスペンサーの人物描写はとてもよかったですね〜

改めて、イーストウッドの才能に圧倒されました。

運命に導かれた男たち・・・かっこいいです

本作は2015年に、フランスの高速鉄道で起きた銃乱射事件を映画化した作品ですが、いざ本編を観てみると、事件が起きたシーンはものすごく短い
この作品は事件の内容云々というよりは、事件で見事犯人をとりおさえ、多くの乗客を救った3人の男性を中心に描いたヒューマンドラマです。

事件はいい意味であっけなく収束を迎え、そこで、やっぱりこれはこの3人の人生や人間性を描いたヒューマンドラマなんだ!と確信しました。

冒頭で列車内の混乱しているシーンを一瞬写し、場面が切り替わり、スペンサー、アレックス、アンソニーの幼少時代が描かれます。
彼らはちょっと学校で浮いてる子どもたちで、学校も、時には親も手を焼いていました。
まあどこにでもそういう人はいるものです。

そんな彼らは大人になり、それぞれの道を歩みつつも、交流をもっていました。
ある日、スペンサーがアレックスとアンソニーをヨーロッパ旅行に誘うことで、運命の歯車が動きます

ここは映画では詳しい描写がなかったのですが、実際はアフガニスタンに駐留していたアレックスが帰国するお祝いに旅行に行くという流れだったようです。
軍のシステムがよくわからないので、なんで急に旅行に行く話になったんだ?と思っちゃいました。

劇中は、旅行をしているシーンも細かくていねいに描写します。
本編は7割・・・いや8割くらいが3人の半生と、事件が起きるまでの旅行しているシーンが描かれているんです。
観ているうちにこのあとテロ事件が起きるというのを忘れそうになるほど。
イタリアで旅行を満喫している日々は、自分が旅行しているかのような気持ちになりました。

それがイーストウッドの狙いだったのかなと思います。
私たちが普段過ごす、過ごしてきたような日常・人生をじっくり描写し、作品の中に引き込ませ、突然急展開を引きこす。
そして、そこに居合わせた3人の男性。
彼らがいなかったらどうなっていたのか・・・
終盤は、結末がわかっていても、妙な緊張感が抜けず、人生は何が起こるかわからないな〜としみじみ感じました。

テロ事件を防いだ3人の男の物語

主役となる3人の男性、スペンサー、アレックス、アンソニー。
この3人の人物描写がよく描かれていて、ノンフィクション作品はよりドラマティックに仕上がっていました
イーストウッドの人物描写のうまさに関しては、毎回新作を観るたびに感動させられます。

幼少期の3人は、同世代の子たちより戦争や軍に興味があったり、サバゲーをして楽しむちょっとオタク気質な少年。
学校でも浮いていて、校長室にも度々呼ばれることも。
それでも彼らはひねくれたりすることなく、それぞれの志をもって大人へと成長します。

3人の中でも、特に中心的に描かれていたのが、スペンサー
彼は幼い頃から学校や日常生活で問題を抱えていましたが、「軍に入って、戦争で誰かを助けたい」という信念がありました。
その志は成長しても変わらず、軍へ憧れ続け、1年の特訓を経てついに軍に入隊します。

しかしスペンサーはなにかとうまくいかず、挫折することもしばしば
空軍のパラレスキュー隊に入るために、人生で最も努力して準備を重ねるも、結局は入れず空軍のSEREに所属することになります。
ところがここでもうまくいかず落第。それでもスペンサーは軍に残り、EMTという人命救助士の職につき、応急処置や柔術を学んでいきます。

夢が破れてしまった彼にとっては、EMTで働く日々は辛いものだったのかもしれませんが、今まで学んできたことがきちんと事件当時いかされていたというのは素晴らしいですね。
けが人の応急処置や、柔術を学んでいたことが、事件の中でいかされているのをみて、学ぶということはいつか役に立つときがくるんだなあと胸が熱くなりました。

多くの人と同じような日々を送っている、いわゆる普通の人でも、特別な日や瞬間が訪れることがあり、そのときどう立ち向かうか、そのときのために今何をすべきか、3人の人生を通して考えさせられます。

スペンサーが旅行中に語った、自分の人生はいつも運命に導かれている、というセリフがすごく好きです。

これからは、本人が本人役を演じる作品も増える・・・?

本作の大きな特徴は、なんといってもモデルとなる人物を本人が演じちゃっているところ
今までこんな作品ってなかったような気がします。

本当に3人は一般人なの??俳優じゃないの??(笑)
外国の俳優の演技って、いまいち上手い下手がわからないのですが、そこらの若手俳優よりずっといい演技していたな〜と思いました。

出演時間はかなり長かったのに、変に強張っていないし、だからといって演技くさくなっておらず、すごく自然。
自分たちが実際に遭遇した事件だったからこそのリアリティがあって、なかなかおもしろい試みでしたね。
演技力というよりも、心に訴えかけられる情熱を感じました。

しかしまあ、全く役者とは縁遠い世界で過ごしている中で、イーストウッドが監督で、その作品に主要キャストとして出演することになるなんて夢にも思わないよな〜

ちなみに、列車にいる乗客も、事件に遭遇してしまった人々が演じているんだとか。
あの太っちょのビジネスマンや、銃で撃たれた人もご本人なんだそうです。
すごいですね〜。ある意味最強に豪華な再現ドラマといいますか・・・
外国人ってみんな演技がうまいのかな?

一緒に見た友人は「すごく似ている役者使ってるんだね〜」と感心していて、本人が演じてるんだよと言ったらひどく驚いていました(笑)

リアルの極み

ドラマティックな作品であると同時に、撮影方法はリアリティにこだわっています。
何度も記述している、本人が本人役を演じるというのもリアリティ溢れる演出ですが、実際に事件に遭遇するまでの旅行シーンも、リアリティを追求した撮影方法をとっています。

3人が旅行へと向かっている道中のシーンは、どんなルートを辿ったかどんなことをしたか誰と過ごしたかというのを徹底的に再現。
そのとき着ていた洋服も似たようなものを選んでいるのだとか!
確かに、クライマックスで実際の映像を再生していたカットと、映画用に撮影していたカットをみると、3人とも同じ服を着ているんですよね。

リアルに再現している、という表現を超えたリアリティを生み出そうとする追求力はさすがイーストウッド監督です。
観ていても、3人とも旅行を楽しんでいるし、非日常的な空間をごく普通に楽しんでいる姿が、彼らに待ち受けている事件との落差を感じさせられておもしろかったです。

ちなみに3人のうちのアンソニーは、旅行中写真を撮りまくっていて、その写真をSNSにアップしているのですが、いまでもInstagramに当時の旅行中の写真があがっています。

それを見返すと、ピザを食べていたり、イタリアの街並みを見下ろしていたり、自分の横顔の写真をあげていたりしているのですが、この写真を撮影している、もしくはしたであろうシーンが、本編にしっかり盛り込まれているんです!
イーストウッドが、いかに忠実に彼らの行動を再現しているのかがわかって、鑑賞後に再び感心してしまいました。

写真撮影大好きなアンソニーは、旅行中常にセルカ棒を使って撮影していて、何気ない旅行中のシーンでインスタにアップするぞ!と喜ぶシーンがあるのですが、そこの字幕はまさかの「インスタ映えするぞ」でした。

ついに字幕に「インスタ映え」なんて言葉が登場するなんて・・・と、本編とは関係ないところで時代を感じてしまいました(笑)

良かった点

・ドラマティックかつリアリティに追求した演出
・キャラクターをていねいに描写したドラマパート

最初に本人が本人役で出演と聞いたときは、主要キャストでそこまでリアルにやるんですか!と驚きました。
でも3人ともいい演技してたと思います。

悪かった点

・特になし

イーストウッドらしい淡々としたストーリー展開でしたが、前半のドラマパートがおもしろかったので、飽きたりはしませんでした。

まとめ

実録ドラマというよりは、ヒューマンドラマっぽい要素の方が強いノンフィクション映画

本人を演じるご本人3人の演技もかなりよくて、違和感なく観れました。
ストーリー展開もわりとサクサク淡々と進みますし、上映時間もそこまで長くないのでだれることなく最後まで作品の世界に引き込まれました。
あれだけのことをやり遂げられたら、自分の人生も悪くなかったなと思えるんだろうな〜

映画らしいドラマティックさを残しつつも、細部まで追求したリアリティには、イーストウッドの手腕がしっかり発揮されているのがわかります。
こういう挑戦的な映画がもっと増えたら面白いですよね。

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